今回審査を受けさせていただいた事、誠にありがたく感じる。と言うのも、自分にとって余り出来の良い日ではなかったのだ。
3年前に受けた交通事故による後遺症の痛みが寒さで全くひけていなかった。
加えて、1月に引いた風邪を治しきれず、1ヶ月近くまともに稽古をしていなかった上での当日である。
審査が始まり、大石師範が前に立ち、号令を掛け始めた。と、その瞬間、時間は逆戻りし、竜南の道場で“大石先生”の
稽古を受けている錯覚に陥った。そして、この時の自分の心は完全に20代そのものであった。だが、痛みはあっさり現実に引き戻す。
あの頃との体調の落差に心底辛さを覚えた。
自分は登呂の道場からの道場生である。
ありがたい事に、その道場には“大石先生”がいた。そして“大石先生”はしっかりした基本の素晴らしさを、身を以って見せて下さった。
この時の“大石先生”の教えがあったからこそ、自分は空手を続けてこれたし、又、息子も極真会に入れる事が出来た。
仕事や私事で長く空手が出来なくても、大会等で顔を出すと、大石師範はにこにこ「おっ!!上林、元気か?!」と声を掛けて下さった。
長い間の休みで不安になっている自分にとって、涙が出る程うれしい事であり、そして“上林”と呼ばれる事はいつになっても、この上ない
誇りである。
その尊敬する大石師範にこんな悪い状態を見ていただいてよいものか、不安であった。
ただ、自分は今まで学ばせていただいた基本に忠実に従いたいと思っている。その気持ちだけでも見ていただこうと審査に臨んだ。
案の定、良い所はなかったのだが、この緊張感はとても気持ちが良かった。
この緊張感を多くの人々が体験出来る様、自分は手助けをしたいと感じた。
そして自分でもこの緊張感を再び味わいたいと思っている。
押 忍
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